長女 7歳。
僕に対して、ごめんなさい を言うべきタイミング。
(言わなければいけないなんてことはないんだけどね。)
いつも言えないわけではないのに、この日は言えずにいた。
その姿をゆっくり、おだやかに、それでいてしつこく見守る僕。
僕 「逆に、パパがとこちゃんの大事なものを落として壊しちゃったのに、プイって、謝らなかったらいやでしょ?」
長女 「うん、やだ(涙目)」
僕 「パパは、ちゃんと謝るよねぇ」
長女 「うん」
僕 「じゃあとこちゃんはどうするの?」
長女 「・・・・」
・・・沈黙・・・・
苦しくなった娘が、走ってその場から離れた。
そして、僕の見えない場所で泣いていた。
それを見た妻が僕をたしなめる。
妻 「そこまで追求しなくていいんなじゃいの? 小一だよ」
僕 「本人は、謝るべきだと分かってるよ」
妻 「泣いてるじゃない」
僕 「謝りたいのに、謝れないという乖離と戦っているんだよ」
妻 「こんな小さな子がそんなこと分かるわけないでしょ」
僕 「いや、分かってるって、この瞬間に学びがあるんだよ」
しばらくして、落ち着いた長女が近くに来た。
僕 「落ち着いた?」
長女 「うん」
僕 「思っていることと、やっていることにズレがあるから苦しいんだよね」
長女 「ううん、違うの。謝りたいのに、謝れないから、苦しかったの」
(一緒なんだけど・・・)
僕 「今なら、落ち着いて、謝れるかな?」
長女 「うん、でもとこちゃん泣いちゃうかも」
そこへ、次女がちょっかいかけに現る。
長女 「あっちいってよ」
次女 「あやまっちゃいなよ」
長女 「あっちいかないと、あやまれないもん」
僕 「ママのところに行っていてくれ」
次女 「はーい」 ←こんなに聞き分けは良くなかったが。
部屋から出て、ドアが閉められる。
しばらくして・・・
長女 「落としてごめんなさい・・・」
と、同時に感極まって、僕の胸で泣き出す長女。 つられて僕も涙。
抱き合って、泣く父と娘。 ああ、感動・・。
そのあと ふたり、風呂で人生を語り合った。
僕 「いいかい? 感じていることと、やっていることにズレがあると、人は苦しくなってしまうんだよ。 ここちよくいきるには、ズレがないことが大切なんだ。 だから、パパ、ネクタイしないだろ? いやだもん」
長女 「それで着ないんだ。 うさと ばっかりだもんね。 パパ、スーツあるの?」
書・とこ